真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

やまと心を詠ずる歌

⑦仏の世界を体感する―心健やかに、安らかに

 ご詠歌の愉しみは、ただお稽古を重ねて、上達するだけでは終わりません。これほど日本全国津々浦々までご詠歌が拡がり、日本人の心に染み込むには、人々の心に響き、根付く理由があります。
 ご詠歌は、仏の世界をやさしく説き明かしたもの。誰の心にも入り込みやすい旋律を培ってきました。そして、密厳流ご詠歌の旋律と歌詞は、誰をも仏の世界へ誘い、迷える人の心を支え、信じる心を育むのです。いつの間にか、少しずつ、自分の可能性を伸ばし、心安らかに、身体も健やかになってゆく道が用意されています。ご詠歌が上達したら……その先には、次なる仏の世界を体感するプログラムが待っています。

 さて、難しい仏教の教えは、これまでにも、さまざまな形で誰もが実感できるように説かれてきました。言葉として文字として学ばなくても、身体で感動を味わえる工夫をいくつも編み出しました。写経や写仏を書き写し、各地にある霊場に納経する。同じように、その霊場のご本尊さまやお大師さまのご詠歌を奉詠する。少しずつ、確かに積み上げてきた信仰のしるしをかたちにして、自分の足で訪れた霊場において、ご詠歌を自分の声でお唱えする。それこそが、巡礼・ご詠歌の素晴らしさなのです。
 特に、ご詠歌を札所でお唱えする時の感動は言葉では尽くせません。一生懸命にお稽古してきたご詠歌を、観音さまやお大師さまの前でお唱えする時、身体の中に熱いものがこみ上げ、感極まって止めどなく涙がこぼれます。想いや願いが切実であるほど、腹の底からわきあがる声は、密厳流の旋律に厚みを増し、仏の世界を実感させてくれます。

 ご詠歌をお唱えする。それはただ単に歌を唄うのとはワケが違います。菩提寺の法要で仏の世界を讃えるご詠歌を、心に抱く想いの丈を声にして響かせる。ともにお稽古してきた同行の仲間と一緒にお唱えするご詠歌には、生きる力があふれます。ひとりじゃない。仏の慈しみにあふれる空間で、仲間と分厚いハーモニーを響かせる。その響きは巡りめぐってあなたを包み込み、その身体を震わせ、心はのびのび、安らかなものとなるでしょう。
 

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