真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

風信(かぜのたより)No.54

 仏教とは仏の教えのことです。その始まりはお釈迦さまが説かれました。お釈迦さまは苦行の果てに、苦行では悟れないことを実感し、瞑想して仏(ブッダ=仏陀)に成りました。いわゆる成仏したのです。つまり仏教では悟りを開くと仏に成る。仏に成ると悟りの境地(安楽)を味わえるというわけです。悟った境地を説き明かしたものが仏教です。
 天国と地獄と言います。死んだ後に往く場所が天国と地獄。良い行いを重ねれば天国に、悪い行いは地獄に堕ちるのです。しかし日本人は昔から、六道輪廻をずっと信じてきました。現世の行いによって死後は、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天のいずれかに生まれる。6つの世界に生まれ死に、死に生まれるをくり返して輪廻します。六道を輪廻する限り、人はいのちある限り苦しみに満ちるのです。この苦しみから抜け出すための教えと、その実践を説いたものが仏教です。
 むずかしい教えをいくら聴いても、私たち凡夫(平凡な人)には良く分かりませんし、時間に追われる暮らしの中で簡単に実践できません。そんな私たちでも、仏の教えに触れ、仏さまと親しみ、仏の世界を体感できる機会があります。これは何も「千載一遇のチャンス」のように滅多に出会えないものではありません。あなたがちょっとその気になりさえすれば、すぐにそのチャンスがあなたに訪れます。そのチャンスはいつ、どこにあるでしょう?
 あなたが仏さまと出会うためにお寺はあります。つまり、お寺は仏(本尊)さまをお祀りするためにその土地に建てられました。そして寺院の本堂の中は仏さまの世界、つまり浄土を顕現(再現)したもの。仏さまの世界をビジュアル化したものが本堂の奥にある内陣で、皆さんがお参りするところを外陣と呼びます。仏の世界は寺院の中に現実に存在し、皆さんは仏さまと出会えるのです。
 仏さまと出会ったら次は仏さまを実感します。仏さまと触れあい、仏さまに成る。仏教は少しずつ仏さまに近づき、成仏するためのプログラムが次々と準備されています。キリスト教やイスラム教、神道は神に成ることは叶いませんが、仏教は仏さまに成ることが可能です。そして仏教はあなたの可能性をどこまでも信じ切る宗教でもあります。あきらめない、投げ出さない、逃げ出さない教え、それが仏教。あなたに眠る可能性を仏教では「ホトケ=仏」と呼ぶのです。
 やさしいお経『勤行聖典』を読めば、仏の言葉を口にします。仏を拝めば出会えます。写経すれば仏のことばを、仏を描けば(写仏)、その功徳を実感します。ご詠歌を唱えれば仏の世界に包まれると感じ、巡礼すれば仏の世界を巡ることになります。さらに瞑想すると仏と一つに成ったと体感できます。吉祥院の年中行事は、そうした仏に成る可能性を拡げるためのものですので、ぜひ皆さんお誘いあわせの上ご参詣下さい。
 

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