真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

仏のことばを読む智山勤行式(勤行聖典)の次第

智山勤行式(勤行聖典)の次第 真言宗智山派には檀信徒の皆さまと一緒に読経するために『智山勤行式』が用意されています。総本山智積院では檀信徒の皆さまが本山に参拝し、朝の勤行に参列された折に、この『智山勤行式』を多くの僧侶と一緒にお唱えしています。堂内に響き渡る声が一つになり、信心を共にする人々の清々しい集いの世界が広がります。このように大勢の人と一緒にお唱えする場合もありますが、自宅の仏壇の前で一人でお唱えすることもあるでしょう。いずれにしても、この『智山勤行式』は在家の皆さまがお唱えするために用意され、信心を強く持つためにとても大事なものです。

 それゆえ、この経本に説かれている内容を知り、その教えを受けとめることができれば、さらに信心を確立するための助けとなるでしょう。そこで、まず全体を見通して、どのような順序立てで構成されているかを確認しておきましょう。

『智山勤行式』は大まかに分けると九つの部分から成り立っています。それらは次のとおりです。
一、懺悔文
二、三帰礼文
三、十善戒
四、発菩提心・三昧耶戒の真言
五、開経文
六、般若心経
七、光明真言
八、宝号
九、普回向

これらの各項目については以下にくわしく解説することにします。ここでは全体の流れをとらえておきましょう。

まず一の懺悔文によって、自らを省みて過去の過ちを正直に仏に告白することを表明します。それによって心を清めます。次いで二の三帰礼文において私たちの帰依の心を表明します。帰依とは信心の拠り所に救いを求めるということですが、その拠り所を仏教では三宝といいます。その三宝への帰依を略して三帰といいます。帰依の心を述べた後に仏教徒としての生活にとって大切な心構えを表明します。それが三の十善戒です。次に四で真言宗の信者として、仏に誓う真言をお唱えします。以上が信心をしっかりそなえていることを確認する作法となります。このような心構えをした上で読経をします。読経の前には必ず読経の心構えを確認するために五の開経文をお唱えします。そして、 次に六の般若心経をお唱えします。次に亡くなった過去の精霊の後生菩提を祈るために七の光明真言をお唱えします。お経と光明真言をお唱えした後に、この功徳がしっかりと身につくように八で仏と両祖大師に祈りを捧げます。このようにしてしっかりと功徳をそなえたら、その功徳をすべての生きとし生けるものに振り向けるために、九の普回向を唱えます。
このような次第で勤行をすることになっています。それをかいつまんで言えば、まず自分の心を反省し、信心を自覚し、新たな思いでお経と真言をお唱えし、仏と両祖大師から功徳をいただき、その功徳をすべての衆生に振り向けるということになります。自分がお唱えし、その功徳をすべての衆生に振り向けることは善業(善い行い)とされています。善業によって身も心も爽やかになり、日々を生きる活力を得ることができます。
このような勤行の全体の流れと、そこに込められた意義を知っておくことが大事でしょう。それでは、この流れにそって詳しく解説を始めます。

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